浮世絵界において美人画の巨匠として知られる喜多川歌麿。生涯にわたり多くの美人画を描きましたが、その中で代表作として知られているのが「ビードロを吹く女」あるいは「ポッピンを吹く娘」と呼ばれる絵です。ここでは、この作品について解説します。
歌麿の代表作 ビードロを吹く女(ポッピンを吹く娘)とは
出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-546?locale=ja)
ポッピン(ビードロ)とは
まず、女性が吹いているポッピンとは何でしょうか?これは日本に伝わってきたガラス製の玩具です。室町末期に長崎に来たオランダ人が製法を伝えたという説や、江戸時代に中国から伝来したという説などがあります。
筒から息を吹き込むと、気圧差とガラスの弾力で底の部分が出たり、引っ込んだりして音が出ます。今では長崎土産として知られています。
呼び方としてはポッペン、ポッピン、ポペンなど様々な呼ばれ方をしています。また、ビードロとも呼ばれますが、これはポルトガル語でガラスを意味するvidroが語源となっています。
明治中頃に大流行し、正月の縁起物とされていたこともあるようで、俳句では「ぽっぺん」が正月の季語となっています。
ビードロを吹く女(ポッピンを吹く娘)の解説
ビードロを吹く女(ポッピンを吹く娘)の評価
「ビードロを吹く女性」のモデルが誰なのかは知られていませんが、当時評判の町娘だったと思われます。舶来品の雰囲気を持つビードロの音色を楽しんでいる様子を描いていますが、ビードロを吹くためにわずかにほっぺたを膨らませた可愛い仕草が人気の秘密かもしれません。
婦女人相十品
ビードロを吹く女(ポッピンを吹く娘)は歌麿の「婦女人相十品(ふじょにんそうじゅっぽん)」という大判錦絵十枚の揃物作品の一つです。この作品群は寛政三、四年(1791~92年)頃に描かれたもので、初期の代表的な作品として位置づけられています。
この頃、歌麿は顔を中心に上半身を描いた美人大首絵を発表し、好評を博しました。この婦女人相十品は10作すべて背景が雲母摺(きらずり)という当時は高価だった雲母の粉を使っています。作者、版元ともに力を入れた作品だったことが分かります。
婦女人相十品に属する他の作品には他に「手紙を読む女」「煙管持てる女」などがあります。
婦女人相十品・手紙を読む女
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