べらぼう 引手茶屋 駿河屋市右衛門 

吉原関係

2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」では引手茶屋を経営する駿河屋市右衛門が出ています。主人公の蔦屋重三郎の育ての親という役柄です。

ここでは駿河屋市右衛門というのは当時、実在していたのか?そして、引手茶屋とは何かという点を中心に見ていきます。

この駿河屋市右衛門役は高橋克実が演じています。

また、女将のふじ役を飯島直子が演じています。

駿河屋市右衛門は実在した!

「べらぼう」の駿河屋市右衛門は架空の設定

さて、NHK大河ドラマ「べらぼう」において、主人公、蔦屋重三郎の育ての親として重要な役割を持つ駿河屋市右衛門。これはあくまでドラマ上の架空の設定です。

史実として明らかなのは蔦屋重三郎は吉原で父、丸山重助と母、廣瀬津与の間に生まれ、7歳の時に喜多川家の養子となり育ったということです。この喜多川姓の養父母の名前はわかっていません。

そして、この喜多川家が吉原で蔦屋という茶屋を営んでいたこと、そして、蔦屋次郎兵衛が重三郎の義兄ではないかと推定されています。

駿河屋市右衛門は実在の人物

さて、駿河屋市右衛門が蔦屋重三郎の育ての親という点はドラマ上の架空の設定ですが、駿河屋市右衛門自体は当時、実在していました。

以下は安永8年の吉原細見です。真ん中あたりに吉原の玄関口である「大門」があります。そこを入ると両側に引手茶屋が並んでいました。門を入って7軒目にある、赤で囲んだ部分を拡大し、180度ひっくり返してみます。

すると、江戸町壱丁目通りへの曲がり角に「するがや市右衛門」という名があります。

引手茶屋の駿河屋市右衛門が実在していたことがわかります。

駿河屋魚躍

さて、この駿河屋市右衛門ですが、他に駿河屋魚躍(ぎょたく)とも名乗っていました。蔦屋重三郎の出版の世話をしていたことも知られています。蔦重と強い関係で結ばれていたようです。

前述のように蔦屋重三郎の母親は廣瀬津与と言いますが、市右衛門はその兄弟ではないかという説もあります。もし、そうなら、蔦重は甥っこということになりますね。

また、駿河屋市右衛門は「葦原駿守中」という名で安永五年(1776年)に「烟花清談」という読本を蔦屋から出版しています。内容は吉原の出来事や由来、怪談・奇談などを集めた短編集です。

また、天明三年(1783年)に出版された「万載狂歌集」に「しら露の 玉を穂末に むすへるハ 秋のきつねの 尾花とそみる」という狂歌が収録されています。

こうした出版や狂歌などから、文化人としての側面もあったことがわかります。

引手茶屋とは

さて、ここでは引手茶屋について簡単に説明します。引手茶屋は遊女がいる妓楼ではなく、そこへ案内する紹介所のような場所です。お客と遊女との橋渡しをするような役割を果たしていました。

特に高級遊女に会う場合は必ずこの引手茶屋を通す必要がありました。吉原の大門をくぐったメインストリートである仲の町の両側には引手茶屋がひしめいていました。

その中でも駿河屋市右衛門は有力な引手茶屋だったと思われます。

参考文献

高木元・及川季江「『烟花清談』-解題と翻刻ー

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