江戸中期に活躍した浮世絵師、北尾重政は蔦屋重三郎が世に出るころには既に浮世絵界の重鎮でした。重三郎が世に出る上で欠かせない人だったと言えます。2025年のNHK大河ドラマ「べらぼう」では。この重政役を橋本淳が演じています。
ここでは、北尾派の祖である北尾重政について解説します。
北尾重政とは
浮世絵を独学で学び、弟子を持つようになったことから、北尾派の祖とされています。
北尾重政の生い立ち
重政の父親は須原屋三郎兵衛という、江戸の小伝馬町1丁目で本屋を営んでいました。須原屋というのは江戸でも名のある本屋ですが、三郎兵衛はそこで奉公した後、のれん分けされて独立しました。つまり、重政は生まれた時から、出版に関係する雰囲気の中で育ったと言えます。
北尾重政の作品
北尾重政は一枚絵や肉筆画などもありますが、絵本や挿絵なども多く手掛けています。その代表作としては勝川春章との合作である絵本「青楼美人合姿鏡」などが有名です。
青楼美人合姿鏡(せいろうびじんあわせすがたかがみ)
この作品は勝川春章との合作で、版元は蔦屋重三郎と山崎金兵衛の共同出版という形になっています。資金を山崎金兵衛が出し、蔦屋重三郎は企画・交渉を担当したのではないかと考えられています。
鍵屋お仙
出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-185?locale=ja)
北尾重政の初期の頃の美人画を見ると、鈴木春信の影響を受けていることが分かります。上記はその典型的な華奢な女性を描いた図。
東西南北之美人・東方乃美人 仲町おしま、お仲【重要美術品】
出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-180?locale=j)
北尾重政は初期の頃、大流行した鈴木春信風の美人画を描いていましたが、その後、より写実的な独自の美人画を確立していきました。
「鶏合せ」
出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-4022?locale=ja)
浮世絵師として、様々なジャンルの絵を描いた北尾重政。上記の図からもその画技の高さがうかがえます。
北尾重政の弟子および影響
北尾派と呼ばれる一派の祖となった重政の弟子には北尾政演(まさのぶ)、北尾政美(まさよし)、窪俊満(くぼしゅんまん)などがいます。北尾政演は浮世絵のほか、戯作者の山東京伝として活躍しました。また、北尾政美は津山藩お抱え絵師となり、鍬形蕙斎(くわがたけいさい)と名乗りました。
また、鳥山石燕の弟子だった喜多川歌麿も弟子のように面倒を見たとされています。他にも鳥居清長や葛飾北斎にも影響を与えたと言われます。
参考文献
コメント