北尾政演の代表作「吉原傾城 新美人合自筆鏡」

北尾派

浮世絵師、北尾政演(まさのぶ)の代表作と言われているのが「吉原傾城 新美人合自筆鏡」(よしわらけいせい しんびじんあわせじひつかがみ)です。ここでは、魅力的なこの作品について見ていきたいと思います。

浮世絵師 北尾政演について

浮世絵師、北尾重政を祖とする北尾派の中で、北尾政美や窪俊満とともに、ホープの一人と目されていたのが北尾政演です。

しかし、彼は浮世絵の才と同時に文才にも恵まれ、戯作者、山東京伝としても活躍しました。文章と挿絵を共に描けるという点では絵草子の版元にとって便利な存在だったと思われます。

徐々に戯作者としての活動がメインになっていったことから、10代後半から50代にかけての活動時期の中で、最も浮世絵師らしい仕事である錦絵を書いていたのは20代の天明年間に集中しています。

その錦絵の中で、政演の代表作と言われているのが「吉原傾城 新美人合自筆鏡」です。

「吉原傾城 新美人合自筆鏡」とは

錦絵「青楼名君自筆集」の出版

天明三年(1783年)に北尾政演は「青楼名君自筆集」という錦絵のシリーズを出しました。版元は耕書堂蔦屋重三郎で、大型のサイズで二枚続きの作品です。

吉原の遊女を描いたもので、二枚續のセットに二人の花魁と新造や禿などが描かれています。“自筆集”とあるように、遊女の自筆の和歌等が記載されるという趣向になっています。

「青楼名君自筆集」北尾政演画 

出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-10569-2141?locale=ja) 

「吉原傾城 新美人合自筆鏡」の出版

天明四年(1784年)に上記の「青楼名君自筆集」、2枚続きを1組とすると、7組をまとめて画帖仕立で出版したのが「新美人合自筆鏡」です。

構成は冒頭に四方山人(太田南畝)の序、7組の絵の後に、朱楽館主人(朱楽菅江)の跋文を載せています。

これについては、8年ほど前の安永五年(1776年)に師の北尾重政と勝川春章が共同で出した「青楼美人合姿鏡」(せいろうびじんあわせすがたかがみ)が参考にされたと思われます。

「青楼美人合姿鏡」 北尾重政・勝川春章画

「吉原傾城 新美人合自筆鏡」

①四方山人の序

②よつめ屋 うた川/なな里

③まつかね屋 東家/九重

④てうし屋 ひなつる/てう山

⑤あうき屋 瀬川/花扇

⑥大もんし屋 ひともと/たか袖

⑦角玉屋 濃紫/花紫

⑧瀬川/松人

⑨朱楽館主人 跋文

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